ちょっとしあわせさがしねま(厳選集)
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ダムド・ファイルっていろんな意味で
かなり本気だと思うんだ

051101


降霊


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1999年/日、監督/脚本/黒沢清、原作/マーク・マクシェーン「雨の午後の降霊術」、出演/役所広司(佐藤)、風吹ジュン(その妻/純子)、岸部一徳(教授)、草g剛(早坂)、きたろう(柏原刑事)、哀川翔(神主)、磯部詩織(少女)

音効技師佐藤の妻純子には霊感があり、常人に見えないモノを見、感じ、降霊もしたので口づてに彼女を頼って来る者さえある。が成功確率は半々、そのため謝礼は辞退し地味な専業主婦として過ごしていた。夫の佐藤は真面目実直な音効技師で2人は寄り添いながら暮らしていたが子供はなかった。田んぼに囲まれた庭付き一戸建てに騒音はなく日々は静かに過ぎていた。

大学院生の早坂は心霊に強く興味を抱き霊能力者としての純子を頼り、遺品から生前を察知する事をよく依頼した。純子にとっては霊能力者として扱われる事は心踊る事ではあるが辛くもあった。言動を疑われる事も不愉快だし恐ろしいモノを見てしまうからだ。ファミレスにパートに出ても、あたかも客の背負う業のような亡霊を目撃し、怯え、そのたび様子のおかしくなる彼女を周囲は当然訝しがるのだ。

夫は霊感体質ではないが妻と長年暮らすうちそれらの「気配」や「あしらい」を憶えた。仕事柄、妻が「寄せている」家で録音した音に無気味な雑音が入るなど時おり妙な出来事には遭遇するが特に気にかけるでも無い。富士の樹海で梢の軋みを摂った時も使った機材から妙な音が聞こえたがそれも同様の現象と聞き流していたのだ。

一方早坂には誘拐された少女を彼女の能力で探して欲しいという依頼がある。訪れた刑事は犯人が意識不明のため一刻も早く被害少女の居場所を特定したいといい、その所持品を持ち込んでいた。呼び出された純子は、連中が彼女にまるでTVの特番のような神業を期待しつつも頭から疑ってかかっている事に堪え切れず中断、帰りがけに早坂から渡された少女のハンカチだけを預かり帰宅した。が、不愉快な1日にやるかたない思いでいる中、置いたままになっていたハンカチを手にした途端霊感が閃いたのだ。「少女は今、なぜか異常なほど近くにいる」と。

その能力はけして誉められるものではなく証明を試みれば引き替えに多大の苦痛を伴うその裏腹もキツイ。「なんにもいいコトないまま、ここで年とっちゃうんだ」「あと1日だけ待って」と夫に迫る純子の気持ちが痛いほどわかる。1ミリほどの可能性に掛け、極度に緊張し慣れない策略をしたところで夫が作るほころびに突沸するのもわかる。
また、元凶である妻には「いいコトあるって言ったじゃない!」と罵られ、哀川演じる商売気満々の神主には「日々慎ましやかに地道に生き平凡を怖れない事だ」ともったいぶって説諭され激昂する佐藤にも同情を禁じえない。

怖いのは「子供と暮らした事の無い」夫婦の子供扱いだった。同じ事が我が家で起こった場合後先考えずともかく病院にと気が急いただろうし怯えた子供がどうなるか予想できたに違いない。これはおそらく脊髄反射に近い現象で弱った子供にはどうしても我が子がカブるのだ。その機微が驚くほど的確なのにも感嘆する。また、清水崇以前、亡霊から顔を削った特殊効果が凄まじい。場面の所々に影のように滲み出現するそれらにまずは怯えていただきたい。

40で惑わずというのは、つまりは引き算の答が見えてしまうことだと思い至った今日。自らを中年と認識する方々にぜひ見ていただきたい1本である。
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