人生な話タイトル

人生訓などではない、これはリアル(現実)である。



しょにょ1●「最後の決断」
負債3000万を抱えた社長の最後の決断とは。

しょにょ2●「ペースメーカー」
ペースメーカーのカズちゃんの事


人生"しょにょ1"

「最後の決断」

負債3000万を抱えた社長の最後の決断とは。(98/07/21-21:04)


私は前記の通り電気工事の会社を経営し、色々な経営者と広く付き合っている。
実の所、私の会社は今年の初め、200万円近い負債を抱えたのである。

会社に雇われている立場にある人たちは、この手の話はあまり実感が沸かないと思うが、たとえるなら、自分がどうしても出版したい本があるとする、その本を製作に当たり出版会社が、最低でも200部でないと受注できないと言ったとしよう。
200部制作してもらって20万円かかるとしよう。

意気込んで市場に出したが、一ヶ月経っても20部しか売れなかったら、当然赤字と言うやつで、自己負担を強いられるのだ。それを商売にして生計を立てている人たちは、その単位にゼロが二つばかり余分につく訳だ。
掛け算をして自分の生活費と照らし合わせればすぐに分かる。一部に対しての純利益が決まっているからだ。

当然出版社には、かかった金を銀行強盗してまででも、払わなければならない。銀行強盗以外に返済能力があれば別だが、、。

経営者とは、その事全部に責任を負わなければならないのだ。
負債とは、私はそれほど重いものと思っている。

世の中には、それほど重い負債を屁とも思っていない奴等が、このところ急増したのだ。たとえば今夜のおかずはコロッケとしよう。しかし、会社に利益がなければ、今夜のおかずのコロッケさえ買う事ができないのである。

なおかつ複数の社員を抱えている会社の社長なら、ほとんどがまず自分の生活に必要なコロッケを買えるかどうかと言う考えは、許されないのだ。
まず社員の夕食のコロッケを考えなければいけないのだ。

経営者の私から見れば当然の事だが、今のどん底の不景気の世の中には、自分の家の今夜のおかずさえ確保できればいいと言う輩が増殖を始めたのだ。

しかし、私はその事に対して愚痴こそこぼすが、そのような輩を悪人呼ばわりする事はとても出来ない。昨日まで私と同じ考えを持っていた経営者だからだ。良心的な人たちがほとんどなのだ。

私は過去に2回ばかり倒産をまじかに体験した事がある。
一回目はおやじだった。

私は当時小学校の6年生だったが、当の本人のおやじは当然雲隠れし、借金取りが我が家に押しかけてきたのだ。
母親は目に涙こそ浮かべていたが気丈にも借金取りたちを我が家に迎え入れた。
借金取りたちは、土足で我が家を徘徊し、赤い差し押さえの紙をいたるところに貼っていった。そしてその事に邪魔をした私の顔を蹴飛ばした記憶が、今も残っている。

もう一つは26歳くらいの時、就職先の会社が5億と言う途方もない負債を抱え倒産した。
当時私は事実上の社長の右腕的存在であり、金額交渉から仕事の材料の手配までしていた。当然その時も社長は雲隠れをし、事実上私の元に借金取りたちが押し掛け、私としては何かしてやりたかったが、してやれる事は何一つなかった、金以外解決方法がないのだから当然である。

逃げ回っているうちに負債を抱えた会社が結束を固め、中で一番活力のある会社が全代行を法的に引き受ける事になり、その会社が代表取締役の社長、副社長の向こう20年間の不再返還計画を打ち出し、法的に社長に突きつけたのである。泣く泣く社長は承諾を強いられた。
20年間自分の給料が差し押さえられるのである。

借りた金は返さなくてはならないのが、当然の世の中の約束事であるだが、当時は仕事があふれるくらいあったのだ。
今の私が考えるに、あれほど仕事があったのに倒産するなんて考えた事すらなかった。

人は生まれた時から、ある程度運勢が決まっており、不幸な星の下に生まれた人間は、どこまで行っても不幸な事が付きまとうと言うが、それを「俺は不幸だ」なんて生きていってもとても耐えられるものではない。
考えを変え、違う方向から自分を見直すといい部分も見えてくるし、それを活力に生きていくしかないのだ。

しかし、おやじにしても、5億の社長にしても、ある程度時代が自分に味方してくれたと思う。負債を返すだけの利益を生み出す仕事があったのだ。
実の所捨てる神あれば拾う神ありで、私の200万円もある仕事による利益で穴埋めする事が出来たのである。

思うに、これには運命とか、ツキみたいなものが存在するのである。

しかし世の中不思議なもので、冒頭で書いた負債200万がなければ、私も今ごろ左うちわである、、、、、、、、、世の中うまく行かないものだ。

しかし、中には自分が原因で生み出した負債を違う形で生産している人間達もいる。

半年くらい前によく現場で会っていた業者の社長の突然の訃報で、急いで葬儀に参列した時耳にした「首吊りだってよ」が、それである。

その社長には息子がいて、息子夫婦に家を新築してやり、自分の放漫経営で出来た借金と合せて合計3000万円あったそうだ。
これを自分の手で、自分の生命保険を活用し完全返済したのである。
生命保険は一年たっても継続されていれば、自殺でも金がおりるのだ。
このところ世間のあちこちで騒がせている出来事だ。

今も元気いっぱいのおふくろがいつも口にしている「生きてりゃ必ずいい事がある」。
この言葉の裏には世の中の景気が深く関係しているのだが、どん底を迎えつつある日本の経済は行き先不透明感がつのり、連日のニュースでは就職率を連呼し、ハンバーガーが65円で買える時代が到来した以上、これから我々の身の上に起こりうる事に心して慎重に対応していかなければ、逃げ場が無くなる事は必須である。

しかし戦後の日本を体験してきた高齢の諸氏たちが口にする警告を素直に受け入れれば対応が何かあるかもしれないと筆者も試行錯誤の毎日である。


人生"しょにょ2"

「ペースメーカー」

ペースメーカーのカズちゃんの事(98/08/06-00:13)


私たちは社会と言う枠組の中で生きている。
この枠組の中で生活をする上で当然、ある一定の秩序が出来上がるが、人々は、はたまた動物たちは、この秩序によってある方向を定め、大まかな目的意識を持ち緩い流れる河となり、発展と言う機動力を生み出しながら、進み始めるのである。

中には全然違う支流を作り出し流れ始める小川も存在するが、今回は、この本流に話を絞り込みたい。

人間社会の中では、大きな同じ目的で結ばれた企業と言う形のものから、小さいものは有志たちがつのった、小さな団体までも数多く存在する。
しかし、その集合体の中で必ず一人や二人いる、ちょっと周りと違う動きをするものも当然存在する。

違う動きをするものたちは、ある時は先導力をいかんなく発揮し、他のものを導く役目をにない、小さな支流から大きな本流の流れまで変えてしまう事もえてして起こりうる。

しかし、中にはそれとまったく逆の支流を作り出し、支流がうまく流れ出さず、蒸発してしまう事もしばしばだだが、前記の場合は非常に結果がはっきりしている。

白黒付けやすいのだだが、非常に中途半端的な存在を示す厄介な者がいる。
そいつに話を通すと、要点とは違う経緯を示し、最終的には同じ目的に到達するのだが、非常に時間を浪費するタイプの諸氏達である。

たとえばそのような諸氏が流れの上流でがんばっていたならば、これはちょいと面倒な事になってくるのだ。
流れの本流に位置するために、後ろにいる全員がペースを乱されると言うペースメーカーである。

このペースメーカーは、自分が後ろの人間達に与える流れの影響を気がつかないのがほとんどだから始末に悪いのだ。

前述した通り私はエアロビクスの鬼である。
毎週最低でも4回から5回スタジオに通い、20代の若い女性達の中で汗を流してくるのだが、中には50代のおばさんやおじさんもまれに出没する事もあり、結構アットホームではある。

その中の一人、20代後半の女性が今回の話題の主である。

エアロビクスと言うスポーツはローインパクトから始まり、レベル1、レベル2、レベル3、ハイパワーコンビネーション(HPC)とさまざまだが、総合してNASAが開発したとされる有酸素運動である。

この話題の主をカズちゃんと仮に呼ぼう。
このカズちゃん、エアロの経験は非常に長いらしく、クラブでもヌシ的存在である。

通常エアロは、一週間の間レベル2か3ぐらいでプログラムされ、インストラクターが全員の前で見本を示しながら、アップテンポな音楽に合せて踊るのだが、見るのとやるのは大違いで、初心者などは脱水症状を引き起こす事もしばしばある過激なスポーツである。
当然、最上位に位置するHPCは、動きも素早く運動量も最大であるゆえ、効果絶大である。

このHPCのクラスに例のカズちゃんは必ず出席するのである。
ヌシだから当然である。
ほかにも男のヌシが少数いるのだが、いずれも優れた運動神経を持ち、機敏なステップを披露しているが、このヌシ達はインストラクターの真後ろに位置する最前列と、長年、席が決まっているのだ。

筆者はと言うと、21歳から30歳まで約10年間エグザスでエアロの経験を持ち、大会出場まで志した一人なんだが、結婚を期に30歳から37歳まで仕事にかまけてサボってしまっていたのだ。
37歳のある日、突然目覚めたように復活し、長年累積した脂肪と必死に戦い、やっと本来のペースを取り戻したのが、つい先週の事である。

このハードなHPCに参加した時ひどい自己嫌悪に襲われた。
ステップがついて行けないのである。
しかし週に3回あるHPCの2回は、機敏なステップについていけるのだ。

HPCは3回のうち、それぞれのインストラクターが指導し、その中でも筆者がついて行けないと言うHPCは中でも一番複雑な動きを要し、HPCの最高峰と言えるクラスだ。

筆者は周りが激しく踊っている中で、立ち止まりしばし、様子を見る事にした。しかし、変わった様子が発見できず年のせいにしてその時はあきらめてしまった。
そして今日また、あの最高峰のHPCに挑戦したのである。

筆者は、前回の屈辱的な出来事をかみ締め、必死にインストラクターの動きを凝視しながらHPCをこなしていった。不思議とついて行けたのだ。
先週の屈辱感がうそのように吹き飛び、笑顔さえ出てきたその時、私の視界をさえぎるイッテンポ遅れた不気味な動きを発見した、、、例のカズちゃんである。

当然ヌシのカズちゃんは最前列に位置し、カズちゃんごしにインストラクターを見る事になるわけだが、このカズちゃん、疲れてくるとイッテンポ遅れ出すのだ。

カラオケで音楽からイッテンポ遅れるやつがよくいるが、文字どおりペースメーカーのカズちゃんは、筆者が位置するところからどう見ても目に入るのだ。

そのカズちゃんの不気味な動きに筆者はペースを乱され、ステップがうまく行かなかったのだ。筆者は視界に入るカズちゃんの動きをなるべく意識しないようにインストラクターだけを鏡ごしに見つめこなしていったら、難なくついて行けたのだ。

筆者は喜びと裏腹に、このカズちゃんをゲームセンターのUFOキャッチャーでつまみ上げ窓から放り投げたくなってしまったが、ぐっと怒りを押さえつつ、クラブの新参者の筆者以外に、誰かが「あんたへたくそなんだから後ろに行ってやってろ!!」と、言ってくれる事を期待する今夜だった。

このようにペースメーカーとは非常に大事な位置に存在するものゆえ、やはり自分の後ろも返り見なくてはならない。
現在不景気街道まっしぐらの日本経済も、自民党総裁が決定しつつある現状だが、国民も今回だけは慎重にこのペースメーカーを選出しない限り、この不況の打撃をもろにかぶり再起不能にもなりかねない。

筆者個人の意見であるが軍人魂を自慢し作戦参謀を志す梶山氏には、とても共鳴できず、大凡人を売り物にする小渕氏も焼け石に水のような気がする。

やはり、小さな支流を開拓する動きを見せる小泉氏に期待する所が大であるが、いずれにしてもこのままでは、明日のコロッケもままならないのである。

しかし世の中うまく行かないものだ。日本人の悲しい国民性なのかはたまた、ほとんどの日本人が自分の手元で精一杯なのか辛くも小淵氏に決まってしまった以上、歴代のさえない短期首相の二の舞にならない事を心から願うしだいである。

街角の小さな出来事から日本の行く末を垣間見たおやじ32号であった。





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