友人に「リングどうだった?」と聞かれた時
やっと本当のオチに気がついたんだよな(笑)

リング(TV版)、リング(劇場版)、らせん(劇場版)
1998年・日本

 はまるというか。はめられたというか。
 始まりはテレビの長時間ドラマをふとした拍子に途中から見てしまった事だった。

 その中には美味しそうに湯気を立てる「両性具有」というキーワードが盛り込まれており、三浦綺音はたいした事はなかったものの、こいつは両性具有だったのかと思うとどきどきしたし、それを心的にいとおしむ原田芳雄というのにも妙があった。
 ラストの特撮のしょぼさはまぁテレビ版だからと言った感があったが、高橋克典もけっこういい線いってたのである。しかも時間はなんだか中途半端な夕方だったし、遊び遊び見てしまった事をささやかながら後悔もさせられていたのだ。

 じつは、これにはテレビドラマ版と劇場映画版があり、それぞれストーリーの根幹は一本であるにもかかわらず、まったく違った登場人物、すみずみの設定や心の機微はまったく異なっている。
 そうする事になんの必要性があったのかという部分では謎(笑)とにかく登場人物を上げてみようか。

浅川和行(浅川れい子)
 主人公。新聞記者。
 テレビ版では高橋克典。映画版では設定が女に変わってて、松嶋奈々子。

浅川の妻(もしくは子供)
 専業主婦。
 特に物語の重要な役ではないが、要するに浅川本人を物語に縛りつける役割。

浅川の姪、智子
 奥さん側の姪っ子らしい。
 物語で言えば起承転結の「起」の役割。テレビ版では雛形あきこだったのは笑えた。

高山竜司
 大学教授。
 これは浅川と共に物語に入り込んでいく連れ合い。相方というか。テレビ版の原田芳雄は原作どおりの印象だが、映画版の真田広之は線が細すぎていただけなかった。またこの映画版では浅川れい子の別れた夫と言う設定になっている。「やさぐれた」とか「粗暴な」とか。要するに遠慮会釈の無い物言いと洞察力、鋭い眼光の持ち主らしい。

高山のカノジョ、高野舞
 高校生。
 テレビ版では無名らしき役者が使われただの女子高生として描かれているが、映画版では『らせん』への前振りというか(この場合伏線とは言わないだろう?(^^;)ちょっとエキゾティックな魅力のある中谷美紀。
 『リング』ではいっちゃあなんだけど物語になんの関わりも無かった(笑)だけど『らせん』では重要な役割を持つ登場人物らしい。なんだかなぁ。伏線くらい敷いといて欲しかった。『リング』の段階で。

山村貞子
 念じて人さえ殺せるという超能力の持ち主。
 物語の核となる存在。映画版ではどういうわけだかまったく触れてないのだが原作とテレビ版では美しい両性具有者。ここけっこうストーリーのネックだと思うんだけどなぁ(^^;『ナイトヘッド』で懲りたか?飯田穣治(笑)。
 テレビ版では三浦綺音。映画版では恐ろしく不気味な化け物幽霊(笑)←これは正直一見の価値あり(笑)

貞子の母、志津子
 透視・予知能力があったらしい。
 超能力をマスコミに騒がれ不義の子を出産した後、三原山で自殺している。

伊熊平八郎
 志津子の超能力を見出し、マスコミに引っ張り出した男。貞子の父親。
 こいつが物語の元凶である。

 物語は姪っ子が心停止で突然死するところから始まる。
 彼女が死んだのは自宅。特に心臓が弱かったわけでもない疲れ果てていたわけでもない。普通の女子高生だったにもかかわらず、死に顔にはただの心停止とは言い難いほどの恐怖の表情が刻まれていた。
 同時刻、バイクに乗った青年、車でHの真っ最中だった男女と、死因は同じ心停止というもののそれぞれ考えられないような状況で死亡。

 事件の不思議さに着目するのが主人公浅川。
 姪を含む死亡者の身辺をあらっていくうちに、1本のビデオテープに出会う事になる。
 そのビデオは箱根の貸しロッジにあり、まったく不気味で意味不明な内容だった。火山の噴火、さいころ、髪をすく女、老婆がつぶやく意味不明の言葉「しょうもんばっかぁしてると、もうこんがくるぞ?」、人々のざわめき、海、海、血の赤、赤ん坊、恐怖に引き攣る男・・・そして瞳に映る「貞」という漢字。
 途中黒いシャッターが下りるようにかしゃかしゃっと画面が何度も途切れる。
 そのビデオの最後には不気味なメッセージが。

「これを見たおまえに残された時間はあと7日。。7日後にはおまえは、死。。。死にたくなければ。。。その方法は。。。」・・・

 ビデオはそこで終わっていた。「その方法」の説明部分が消されているのだ。
 まるで最後の言葉を証明するかのような不気味な無言電話が鳴ったりで、浅川はそのビデオテープを長年の因縁のある高山竜司に持ち込む。

 高山竜司は浅川にとっては鬼門で、彼に関わるとろくな事が無い。特に超能力の事に関しては異様なほどの興味と鋭い勘がある男である。
 浅川はもちろん及び腰で彼に持ち込みはするものの、話が深部に行き着く頃には今までどおり彼の突拍子もない発想にはうんざりしていた。

 高山竜司はそれを「念写ビデオ」だというのだ。しかもぞっとするような恨みの念のこもった。
 彼ははっきりと浅川に宣言する。「この最後の言葉は本当に起こる」と。それを見た浅川も高山も7日後には、心停止した若者同様、恐怖に顔を引き攣らせながら死亡するであろうと。

 この後の話はここでは語らずにおこう。それぞれにビデオで確認して欲しい。
 出来ればまず原作、テレビ版『リング』、映画版『リング』、映画版『らせん』。。。まあ『らせん』はおまけというかオプションというか。
 言わせてもらえばゲームソフトで言う抱き合わせ販売のような感触だった(^^;こちらの方は原作さえ買ってないが。

 ちなみに原作版『リング』も、あまりにテレビ版映画版の内容が違っているので、あくまでも真実が知りたいがために買ったものなので、読み飛ばしもいいところ。
 カメのように読み進んではいるがとりあえずは資料として活用させていただいている。

 前に『エヴァンゲリオン』のブームがあったが、私は正直一緒になって踊る気にはなれなかった。
 確かにアニメの手法は斬新だったしエヴァ本体のフォルムは美しかった。あれのフィギアだけならば金さえあれば揃えたいくらいだった。
 キャラクターにもそれぞれ特色があるといえばあるのだろう。綾波にはたいそう包帯が似合っている上に、クローンというところが泣かせるじゃないか。
 が、私が許せなかったのは、「使徒」とか何とかエッセンスはふんだんにかかっているのに口にしてみるとその香りがしないところである。

 先に出たから言うが、トムヤンクン的に言えば(笑)色は真っ赤で唐辛子の本身さえ30本ぐらい浮かんでいるのに辛くない(笑)酸っぱくもない。なじぇ?(^^;;;;みたいな。これ、トムヤンクンか、間違っててもチゲ鍋じゃなかったの?みたいな。

 『リング』のいろいろを何度か見ている間、クローネンバーグに『ビデオドローム』っていう作品があったなぁとか、『ノーライフキング』って子供らがすっげ〜リアルで面白かったなぁとか、『学校の怪談』もなかなか噂とかっていうつかみはオッケ〜だったよなぁとか、『パラサイト・イブ』は話はものすごく壮大になりそうだったのにラストでぽしゃってるよなあとか・・・とにかく走馬灯のようにいろいろな映画が思い出されるのだ(^^;エッセンスのパッチワークのような。
 よくもまあこれだけ貼り合わせたもんだというか。

 エッセンスはとにかく、いろいろぶち込まれているのだ。
 人々の噂、7日後に死ぬという意味不明のビデオテープ、超能力、両性具有、古井戸、結核療養所、天然痘、、、やさぐれたサブ主人公に巻き込まれていく主人公の心的葛藤、謎解きの妙。これで面白くないわけがない。あとはこれをどう料理するかなのだ。

 何よりも、私がこうして、え?どして?違うんじゃないの?とか、あれ〜〜??なんでぇ??(^^;;とか、、、矢も盾もなく確認したくなったのだ。
 まるで7日後の死を宣告されたかのように(笑)・・・
 それがとにかくこの化け物のヒットを生んでいる事は確かである。なんだか感動してるんだかよくわからないが。

 もう、すでに、エヴァやポケモンやそういったなんだかわからないけどはめられているような気がする(^^;という作品の目白押しの昨今、とりあえずヒット作の「ええじゃないか」現象といっておこう。

 最後にどうせ販促に貢献するならば、ここだけは美味しいはずというところを上げておこうか。

テレビ版『リング』
 その表現の忠実さ。
 最初と最後にはちょっとぷぷっと来ちゃうところがあっても、両性具有やら何やら、とにかく原作の基本要素はしっかりこなしていると思う。
 ビデオの中で老婆がまるで英語のレッスンのようにキーワードを何度も言うところや、原田のもってけな演技などは、出来れば撮影の苦労話が聞きたいほどである。

映画版『リング』
 内容はどうでもラストシーンに尽きる(笑)。
 話によると心霊ビデオとしても役立っているそ〜である。表現は確かにテレビ版よりリアル。感性も豊かといえば豊かだろう。主人公浅川女史が女として母としてがんばっているところにも着目したい。ただ、泥水の入ったバケツを女に気が遠くなるまで持ち上げさせるという演出は原作をそこまで曲げたならついでに曲げて欲しかった。

映画版『らせん』
 何もそこまでしなくともというのが正直な感想である(^^;
 原作自体中編というか内容的には短編の部類に属するものであるだろうに。だらだらと壮大に広がっていくと思われる前振りだけのドラマになるより、私は『らせん』のこの凝縮された要素がいとおしい。。。
 そうそう、鶴見辰吾の巻き込まれ方は良かった。さえないもてない男であったし今までの人生良い事なぁんにもなかったよねぇ、成仏せいよといってやりたかった。今度の正月には『らせん2』だかが出るらしいし。とりあえずは楽しみにしておくとしようか。

 さて、ここまで語ったのは去年の末であったが、今年になって、さらに追い討ちをかけるように『リング』のテレビドラマ版が登場している。主人公浅川は柳場敏郎、高山竜司は私はよく知らないが、人気グループの某というお人で、これもまた有名人らしい(^^;
 ・・・・・解った。とにかく面白かったよ、怖かったよ。傑作だと思うよ、すごいと思うよ・・・

 ここまで言えば借りてきて見る気にもなるだろう。
 ふっふっふっ・・・・・・

「これを見たおまえに残された時間はあと7日。。7日後にはおまえは、死。。。死にたくなければ。。。その方法は。。。」・・・

 END



「満月夜には恐怖映画を」扉に戻る
タイトル一覧に戻る
ジャンル別短編感想文投稿板/ちょっとしあわせさがしねま

夜会大扉に戻る