次の朝早く、私は屋敷を後にした。 青年が、駅まで送らせましょうと言ってくれたが、一人で歩きたいからと断った。彼は私の姿が森の中に消えるまで、凍るような空気の中その屋敷の玄関で、私の後ろ姿をを見つめていた。 森の中を歩いている間私は、昨夜の出来事を思い返していた。
彼の手紙にあった魔性のものとは、本当は蝶ではなかったのではないか、と。
一体何が、彼らをここまで狂わせてしまったのだろうか。
そうしているうち、森の出口らしい拓けた草原が見え始めた。 その時、今歩いてきたはずの森へと続く細い道の奥から、微かな笑い声が聞こえたような気がした。
終わり
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